畑塾1
2011年恒例の畑塾の模様をやさい塾スタッフUがレポートします。
12月18日日曜日 快晴
「やさい塾」の番外編—「畑塾」が、開催されました。
4回目となる今年は、参加者総勢54名。
OLさんや料理教室の先生、デザイナーさん、レストランのシェフや修行中の若者、なかには常磐津の駆け出し先生など多彩な面々の一行でしたが、共通項は「野菜に関心がある」こと。
普段食べている野菜たちがどんな畑で育っているのかを見てみたい、感じてみたいという思いを胸に、早朝7時にいざ出発。
大型バスに揺られ一路、茨城県は霞ヶ浦北東の行方を目指しました。
内田さんからは、
「今日は、僕の話じゃなく、静かに土を感じてほしいんです」
とひと言。さて、どんな畑との出会いが待っているのでしょう?
霞ヶ浦を抜け、最初に訪ねたのは、れんこん生産者である岡田晴雄さんの蓮田です。
晩秋から旬を迎えるれんこんは、今がまさに最盛期。
薄く氷の張る田んぼには、半身まで水に漬かりながら、腰をかがめる奥さんや息子さんの姿がありました。
聞けば、れんこんは、地下20~30㎝のところを這うように根づいており、それを手探りで掘り起こして採取するのだとか。
大変な仕事です。
蓮田の縁には、採れたてれんこんが山積みされていました。
その一つをとって、岡田さんが説明してくださったのは、
「表面の赤いところは、汚れではありません。しぶといわれる鉄分で、本当はこれがついているほうが、鮮度がいい」
節をポキンと折って、
「ほら、新鮮なものは、こんなふうに糸を引くんです」
そのほか、れんこんの知っているようで知らなかった興味深いお話を、あれこれ聞かせていただきました。
水温は10℃。家族全員で一心、れんこんを掘る。
備中れんこんは、日本の在来種。粘りが強く香り高いのが特徴だ。
ほら! 採れたて新鮮なれんこんは、こんなに糸を引くんだよ。
次に向かったのは、自然栽培(※)の第一人者、田神俊一さんの畑です。
200年もの歴史ある畑で「自然栽培」という新たな試みをスタートさせて、今年で13年。
噂に聞いたその素晴らしさは、土を踏みしめ、野菜たちが呼吸するその空気を一緒に吸ってよくわかりました。
しんと静まり返った一面の畑を包んでいる不思議な安らかさ。
これは、いったい何だろう? 田神さんに聞くと、
「ストレスなく育っているからね」
とさらり。
整然と畝なす畑には、雑草も生えていなければ、虫もいない。
それもこれも、施肥や農薬を必要としない自然のままの土だからなのですね。
であればこそ、野菜はその土とみずからの力を効率的に使い、マイペースでゆっくり育つことができる。田神さんの目指す「安全と安心」を形にできる。
整然と畝なす田神さんの畑。
無肥料無農薬の畑は、安らぎに満ちている。
畑を渡る風が心地よい。
さて、そんな畑で旬を迎えていたのは、かぶ、にんじん、白菜、大根…。
出荷までもうあとひと息という小松菜やほうれん草も、美しい姿で並んでいます。
我々も、かぶとにんじんを採らせていただきました。
ふかふかの土を足の裏に感じながら、根元を両手でつかみ、くっと抜く。
ああ、気持ちいい!
おお、立派な根っこだ!
きれいだなあ。
あちこちで声が上がり、手には採れたての土付きにんじん、かぶがいっぱい。
内田さんが言いました。
「ほら、見て。このたくさんのひげ根を土深く伸ばし、栄養を吸い上げているんだよ」
そして、その根のまわりでは、土中の微生物が休まずせっせと活動している。
命の鼓動が聞こえてくるようでした。
参加者は、にんじん掘りに一生懸命。
土がやわらかいせいか、意外に力はいらない。
葉は枯れて、土の中では熟したにんじんが息づく。
どうだ! この立派なにんじんたち。
帰り際、枯れた実のぶらさがる畑をみつけました。
なんと、青なすです。
この夏、どれほどの人がこのなすに「うんまい!」の声を上げたことでしょう。
しわしわに枯れてなお、たくましくぶら下がるその姿に、「枯れる野菜がいいんだよ」と常々言っている内田さんの言葉が思い出されます。
そうか。
これが本来のあるべき野菜の最後なのか。
思わず、見入ってしまいました。
みごとに放射状を描いたブロッコリーの葉。
そのなかにうずくまる丸いブロッコリーは、いまが食べごろ。
見よ。この丸い美しいかぶ。
本来の旬に、自力で育った野菜はバランスのとれた形をしている。
田神さんと内田さんは10年来のつき合い。
「この葉脈。くっきりとして左右が対象。すばらしいね」
と内田さん。
畑塾2に続くー